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WORK:市川の家                      平成16年1月 竣工   木造2階建(1部中2階あり)
敷地面積: 188.47㎡ 延べ床面積: 147.89㎡ 

市川の家

市川の家

江戸川の向こうに広がる東京の郊外であったはずの市川の街も、僅かに残す松の木林のお陰で風致地区となっている所があります。計画地はこの中に在ります。かつては百坪単位の敷地が松林の中に広がっていたであろうと思われます。それは、分筆々を繰り返した為に造られた私道を辿りながら当該敷地へつながる事から変遷の様子が想像できます。

今では50~60坪程度の大きさに落ち着いているようで、一帯は隙間なく住宅で埋め尽くされている状況です。計画地は60坪の長方形をした形で良い敷地の部類に入り、JR本八幡駅まで5分程度と生活の便が良く、レッキとした都市型住居であります。

 

施主からは3世代住居の依頼で、家族構成は50代後半の夫婦と娘二人の4人家族に、90歳を超えるお爺ちゃんを引き取って、一緒に生活したいと言う要望でした。施主本人は大手企業のサラリーマンで引退をまじかにしておられます。これから住まいでの生活が1日の大半を占めるであろう事は容易に感じとれます。

土地の特性

土地の特性はなんだろう? 南北方向は迫った感じで奥行きはありませんが、東西へは2階のレベルで視界が確保できそうだと思いました。高さ規制がかかって2階建て以上の建物はなさそうです。きっと屋上からは点在する松林も独り占めできそうです。

2階が中心世代のグランドフロアー

そこで、日々の生活の主体を2階に設け、2階が中心世代のグランドフロアーとする事にしました。1階は高、若年世代の為の領域とし、特にお爺ちゃんには、イザと言う時の為、アプローチの良さを最優先に玄関そばとしました。庭と一体になった場所づくりを致しました。全て1階で事足りる様にしてあります。階段ホールを隔てた、反対側に娘さんたちの部屋がありますが、プライバシ-については注意を払っています。2階のグランドフロアーには蓄熱式床暖房の蓄熱材が敷き込まれ、2階の騒音・振動を防ぎ、2階での暮らしが活き活き、のびのびと出来る空間を確保しました。

グランドフロアーの代役

駐車場の上部は人工地盤ウッドデッキとなり、グランドフロアーの代役を果たします。台所の位置は居間、食堂、ウッドデッキへサービスする要の位置にあります。ウッドデッキは活き活きとし、全体として落ち着いた空間が生まれます。

この建物を特徴づけるsymbol的な空間

この計画では1階、2階を繋げる階段が重要になってきます。そこで階段に色々な用途を持たせ、快適でのぼり易い階段である事がここで暮らす為の快適エッセンスにつながると考えました。さらにこの建物を特徴づけるsymbol&spritな空間に仕立てる事でこの空間が幾倍もの効果をもたらすであろうと思われました。 トップライト、飾り棚、蔵(中2階)の入口、通気、何よりもまず、1階から2階へと流れるようなホール空間は2階の居間と一体となって、豊かさに大きく貢献している事です。

台所が扇の要

普通であれば南に設ける窓をここでは設けないで措きました。眺望、風通し、遮光が期待できなかった為ですが、その変わり台所・トイレ等のサービス空間をコンパクトにまとめ、居間・食堂・ウッドデッキへサービスの要としました。2階の採光はトップライトから採る様にし、居間は後退した壁面に庇を十分とる様にしました。

風致地区で生まれた屋上庭園

ここの2ツ目の特徴は風致地区の絶対高さ10m規制の為、積極的に陸屋根とし、屋上庭園を設けた事です。お爺ちゃんへ地面を差し上げた為、家族には屋上が庭園となったわけです。皮肉にも松林のお陰で風致地区となり、風致地区で生まれた屋上庭園から、その松林を独り占め出来るとは…。

コンクリート造の建物では、珍しくありませんが、木造では珍しくありませんか?芝生を貼る事で、太陽の断熱、雨音の吸音など…熱、音、光に効果を発揮いたします。左に見えるアクリドームは階段ホールのトップライトになり、夜には屋上庭園の庭園灯になります。アクリドームの周りにベンチを設けると、幻想的な光を楽しめそうです。

蔵を踊り場に

三世代住居ともなると、何かと捨てがたい持ち物が増えてまいります。
2階の和室全体(10畳程度)を70cm上げ、1階に集められた水周りの天井を低く抑える事で、天井高1350mmの蔵を確保する事が出来ました。入り口は階段踊り場からですので無理なく侵入でき、移動も可能です。キャスターを利用すれば、楽に収納できます。10畳の広さがあるので物がドンドン入り込んでいきます。しかし、取り出す時に要注意です。

2階の主寝室

一般より70cm高くなっています。主寝室ですので、茶室にでも入るような感覚で閉鎖的な空間にしています。このクグリ込んでいくような感覚が、ねぐらの用途に適って、好評でした。

玄関まわり

アプローチは真っ直ぐに伸びた高塀に沿って導かれ、格子戸の先にはシンボルツリーが植えられる予定です。格子戸の手前が玄関となりますが、それに相応しく小じんまりと浮かぶような屋根があると良いでしょう。この辺は未完な所です。
隣地は裏側にあたり、好ましくない光景が広がっていましたので、単なる塀ではなく、外壁に呼応する様にシッカリとした面を形成しています。そうする事で、新たな雰囲気と広がりが生まれます。風通しは必要なので大和塀としました。

風呂まわり

風呂場について工夫の数々を並べてみます。
*お爺ちゃんの介護の為に、風呂場はゆったりと、特に洗い場は。
*ジェットバスで疲れをとり、入浴を楽しめる様に。
*床は僅かな面積なので、ここ一番、船舶デッキ用で耐水性のあるチーク材としました。厚めの天板とし、カンナをかけられる様にネジ止めをしていません。何年経っても新鮮な状態で使えると思います。
*風呂場は乾燥室、温室へと早変わりします。温風器内蔵の換気扇である為、可能になります。雨の日の事、御爺ちゃんの事 を考えると大変便利です。
*洗濯機の集水ホースが浴槽の角に収まって、簡単に風呂の 廃水を活用できます。
*窓から庭の景色が楽しめられる様、低めの窓としブラインドのサンドイッチガラスを採用しています。

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