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​快適エッセンス

快適エッセンス-circumstance 
  周辺環境の変化を読み、土地(自然)の可能性を活かす

土地はめぐり合せです。社会的な要因があり、なかなか思う様には参りません。もし、あなたに選ぶチャンスがあるのであれば、是非、見極めて頂きたいです。今ある土地が意にそわないモノであったとしても、決して諦める事はありません。一定の広さの敷地に道路が接道していれば、建て方によって、見違えるほど短所を補う事は可能です。残念にも、自然環境が失われている場合は、庭を作りだす様、心掛けて欲しいものです。逆に、自然の残った地域の土地に出会ったとしても安心できません、どこの街においても変化は激しくて、アッと言う間に都市化の波は迫って参ります。
我家においても同様、周辺の田んぼが次々と建物へと変わっております。まず、基本設計は周辺環境(cirumstance)の変化を読む事から始まりました。そこで、都市化する方角に対しては、大胆に大屋根にて閉じ、永らく変わらないであろう鎮守の森に対しては積極的に開放し、南庭と一体となった自然を取り込む様に致しました。全ては最初が肝心です。

快適エッセンス-harmony 
  さり気なく、その場の風景(アメニティ)に馴染むように

住宅は社会的な存在であり、地域との良好な関係と責任を果たさなければなりません。置かれた環境にも拠りますが、日本風土の恵みである、光・水・土による循環型エネルギー、「森の資源」を活用したいものです。建物は風土からはなれられず、風土を守るべきルールとして重なり合いharmonyある風景を形成していって欲しいと思います。
我家は近づくにつれて前面の道路に立つと、ふと、それまで大きく見えていた屋根が、ちょうど視線に重なり始め、低く押さえられた印象を受ける様になっています。少し勾配のある敷地の為、奥の公園からは2層を覆う大屋根が平屋建てに見える様に、ひっそりとしたデザインにまとめられています。公園で遊ぶ子供達にとっても親しめるように…。また、自然素材は風景に馴染み、時間が経っても味わい深さが増してきます。外から眺めていると、ふと、この建モノはこの土地に生まれて来てくれたのでは?と感じる時、私自身と共に生きてくれる馴染んだ存在として、傍に居てくれるのです。                                  

快適エッセンス-shelter
  建物の基本性能は押さえられ、外的な嫌悪要因から匿われる

まず、安定した構造体をもって屋根・壁・床を支え、気象の変動から穏やかに身を守り、外界の嫌悪な要因から匿って(shelter)くれるような建物であって欲しい。建物の基本性能は押さえておかねばなりません。その為には、目に見えない所の仕業が必要となります。その上で、光と風をコントロールし、外へ繋がる視線の開放とプライベートの確保をどうバランスを取っていくか?見極めが肝心です。そうする事で内部に落着き、やすらぎと安心感をもたらしてくれます。
我家では生垣・外壁・内壁でコの字型に幾重にも囲み、外の喧騒をしっかり遮断し、光を抑えたり取り入れたりしながら、徐々に居住空間へ至ります。すると、森から小鳥のさえずりや小川のせせらぎの音が耳に入って来るようになります。朝の木漏れ日の差込みが午後にはヒンヤリ日陰をつくり出します。季節の花が視覚・嗅覚を楽しませてくれる等…、大らかに自然の情報(1/f ゆらぎ)を取り込みます。その結果、森に包まれたプライベートな別世界が誕生致しました。夕暮れからの夜の光はまた格別で、居心地が良いのか、ツイツイ長居してしまった来客から、帰宅後「なんだか軽井沢にでも行っていた様で、不思議な感じがする。」と感謝の電話が届きます。

快適エッセンス-simple & rich
  何となく関係しあって一体となる、無駄のない豊かな空間

生活の場は、ほど良い大きさで無駄がなく、使い勝手がよくて、のびのびと感じられるsimple & richな多目的な空間であった方が、良いと思います。窒息した部屋などなく、何となく関係しあって一体となる空間。我家では、内部1階LDKは扉がなくワンルームになっていて、それらが適度に遮りをつくりながら繋がった集まりとなっています。廊下が要らず、空間が重ねて利用できる事で、凝縮していながら、広がりが感じられるのです。形は正方形の空間であるほど落着きが生まれる様で、大きさは一般的には3間ぐらいが目安とされています。当然、我家もそうです!
例えば、最大限に見通せる部屋の軸線や天井全体に繰り広げられる大梁のリズム、そして、4間ある大胆な開口の建具が全て戸袋に収まり庭と一体となるように。また、断面的には、階高を抑える事で日々の登り降りの負担を軽減させ、その分、大梁を露出させる事で高さを確保するように配慮しています。また、普通は2階の上に出来てしまうような屋根裏部屋は我家ではウォークイン出来る使い易いクローゼットになっていたり、天窓のある快適な子供の寝室へと変化している事などがあります。タテ・ヨコに無駄の無い空間構成にする事で、使い勝手を良くすると同時にコスト削減に大いに貢献しています。shake and brush up the plan!!

快適エッセンス-steady & relax
  サービスされる空間を明確にした、溜まりのある空間を

サービスする空間とサービスされる空間のゾーンを明確にすると、住居全体のおさまり(steady &relax)が良いようです。壁を背にして座ると、落ち着き(steady & relax)ますし、コーナーが閉じられていれば、なお人は無意識にそこに座る様になります。安易に開口を設けずに、溜まりの空間を設ける事で、お気に入りな場所をつくる。お気に入りは、一人くつろぐ場であったり、「お茶の間」のような団らんの場であったりと、一概には言えませんが、人の心理に適った居心地良さをつくり出す事だと思います。我家の居間のコージーコーナーもその様にしつらえています。写真の場合では外部の喧騒、さらには内部から発生する空調・冷蔵庫などのノイズさえも無くし、近くの棚には本や旅で買ったオブジェが置かれ、また、ミニバーを設けるなど、好みの演出がなされています。

快適エッセンス-symbole& sprit
 求心力を持った中心があるか

家族を集める求心力を持った中心があるか。部屋の中に燃えさかる炎がある事は、とても感動的です。慈しみをもって炎を見ていると、なぜか心は穏やかになり、ゆったりとした時間が過ぎてゆきます。残念ながら、昨今はテレビに中心の場を奪われがちですが、我家はそうはさせじと、暖炉symbole & spritに火をともし、暖炉が家族の絆を深める求心力であリ続ける事を願っています。誠に贅沢な団欒のひと時です。時折、私には夏の汗が燃えているように見える時があり、そこから離れられなくなってしまいます。これも炎のしたの力持ち?   

快適エッセンス-natural energy
 光・風のコントロールで、自然エネルギーを活用する

夏暑く、冬寒い。四季の変化に富んだ風土であるので、自然体から離れて、ややもすると人工的な均一な空間に成ってしまいがちです。上手く自然エネルギーnatural energyを活用すべきと思います。夏の日陰に通る風の爽やかさや、冬の陽だまりに差し込む陽の温かさを得るために、様々な所に工夫を凝らしてみると良いと思います。
我家では、心から暖まる暖炉と深夜電力を利用した底から暖まる蓄熱式床暖房の組み合わせた暖房の考え方をベースにしています。そして、エネルギー損失を防ぐため断熱性能の向上させる様、構造の柱(4寸角)の間にALCコンクリートの万年塀の様にして組み込んであります。また、それは遮音に、耐火に、さらに耐震性能の向上に役立っています。(地震の時の揺れが、木造のそれとはまったく違うのです。)これはスゴイアイデアです。夏は断面的に考えられた換気、床下の調湿用の木炭、深い庇などに拠る自然な涼感を得るようにしました…。しかし、多治見の夏の暑さには負けました。風通しだけでは済まず、数年前、エアコンを導入致しました。悔しまぎれに申しますが、除湿で十分対応できます。

快適エッセンス-simple beauty
 奇をてらわず単純明快なデザインに美しさを求める

外観は自然素材を用い、鎮守の森に負けないよう「神殿造り」の力強さを表現しました。身の廻りのインテリアはライフスタイルに合った合理的な住まい方の追求し、1階は北欧風、2階は和風なものが違和感無く融合されたデザインとなりました。北欧風と和風は相性が良いです。奇をてらわず単純明快simpleなデザインに美しさbeautyを求める事も飽きの来ない、変わらぬ安心感をもたらす秘訣であると思います。年を取らなガラスやステンレスよりも、住まう人と共に経年の味わいを重ねられる自然素材に囲まれた生活の味わいは居心地の良い棲家となる必要条件であるような気が致します。木は落ち着きます。メンテナンスは大変ですが、汗かく事も必要だと思っています。週末ウロウロする事はなく、すっかり外出が減ってしまいました。

子供は刻々と成長し、家族構成も変化していきます。そんな変化に対応で切るような、flexibleな器でなければなりません。もともと日本の生活文化には、伝統的に多様な機能を一つで済ませる考え方(蒲団・襖を使った日本間、道具としての箸など)を持っていました。木造である事で、既に増改築に対応し易くなっていますが、畳のある和室の部屋は客間から1人娘の部屋へと変わり、いつかは元の部屋に戻っていくでしょう。2人息子の部屋は長方形の洋室で、成長に合わせて良い関係が保たれるよう気遣いながら、システム家具(made by isozaki)によって分割し、変化に合わせています。
私のアトリエ(左下の写真)は木レンガで敷き込まれた土間でしたが、今は客間にもなる様、独立した機能を持った部屋に変化していっています。もう少し、ラフな部屋であった方が良いのですが、チョット窮屈な感じが致します。

快適エッセンス-flexible
 暮らしの変化の対応する融通性があるか
ヘッディング (小)
快適エッセンス-lifestyle
 自分達のライフスタイルに合っているか

生活力・価値観・嗜好も人によって様々ですが、それ以前に現実の生活に埋没してしまって、なかなか自分らしく暮らしを楽しむ事ができない。住宅の設計はライフスタイルlifestyleをデザインする事だと思っています。納得した家づくりが出来ると、水を得た魚のように自分を再発見する事だってあります。その人に適った生活lifestyleがイキイキとしその人らしく自信を持てる様であれば良いと思います。

御紹介している我家は、設計者自身を色濃く物語っておりますが、住宅は建ててお仕舞いではなく、どう住みこなしていくかによって、結果が現れます。この結果を如何に予測するかが、設計者の力量です。住みこなす事、生きていく事、必ずしも夫婦は一体ではないし、子供はまた違う人生を歩んでいくかもしれません。しかし、不思議とある環境に育った子供はいつの間にかそれを受け継いでいる可能性があるもので、それが家のカラーになるのではないかと思っています。ですから施主であり設計者である私は、普遍性を求めました。奇をてらわず、押し付けがましくないものを。
 

設計者から、ヒネリの10カ条-my favorite spice
こうして教科書のような事を書いておりますが、時々お酒を飲んでいる時、オチョコを見つめながら思うことがあります。行儀のよい磁器と違ってヒン曲がった陶器の中に自分の飲み易いbest pointを見つける事があります。何とも言えない形に親しみを感じ、使い馴染んでいきながら、愛用のイッピンになっていく。「作者は何処まで意図したものか?」 ヒネリの中に調和があり、多様な許容性を秘めている。「極めつけの住まい」は快適エッセンス10カ条をヒネッテみると、あなた独自のbest houseが見つかるかもしれません。それは設計者の創造力のロクロの中から生まれてくるのであろう…?白井晟一ブランドはその代表格で、一般的では在りません。この話は、ややもすると押付けがましい設計者のトリコとなるので、気付けたいところであります。

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