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快適エッセンスを支える工夫

玄関について

玄関扉の前に立つと、それまでの外観の印象とは裏腹に、大きく広がった低い下庇に包み込まれる様な感覚にさせられます。右手にはウエルカムベンチが用意されています。ふと振り返ると遠く山並みだけが見渡され、別世界の始まりの予感を感じさせます。
玄関に入ると、内は低く、狭く、暗くしています。村野先生の話によると玄関は大風呂敷を広げず慎ましくする事が普請の極意だそうです。敬意を評して、先生のデザインによる照明が置かれています 

壁と開口について
 
背にする大きな壁と向いの大開口とが我家の特徴です。その4間ある開口は磨き丸太の柱を残し、全ての建具(雨戸・網戸・ガラス戸・障子)を戸袋に収納してしまえます。目前に広がる鎮守の森の息吹が部屋に飛び込んでくる様に感じるでしょ。実際、小鳥やトンボが飛び込んでくる事があって、運悪くガラス戸に衝突し、息耐えてしまった小鳥たちの墓地のコーナーが庭に在るんですよ。
この4間の窓は強化ガラス1枚で軽量化していますが、それをペアガラスにして、その重さに対応するへーベシーべと言うレバーハンドルに連動した特殊な滑車を使った建具で、気密性と機動性を兼ね備えた上で、断熱性を確保したかったのですが、残念ながら予算が足りず断念しました。今となっては、無理してもやって置けば良かったと思っています。

床暖について

近くに小川が流れている事もあって、冬の早朝はゾッコン冷え込み、-6℃位まで下がります。幸い、設計段階で深夜電力対応の熱式床暖房を知り、採用したのですが、大正解でした。1日の1/3(8時間)にあたる深夜時間帯に通電し、蓄熱材(硫酸カリウム)を溶かし、残りの日中~夜間(16時間)にかけてゆっくり(30℃位で)発熱しながら固まっていくと言うものです。深夜電気料金は通常の1/3ですから、大雑把に言って約3時間の電気料金で1日中温かいったという訳であります。温かさは人肌で自然でありますし、早朝の底冷えは致しません。低温被害の心配もありません。静かで快適ですよ。想定外ですが、木造の場合だと根太に蓄熱材が挟まれるので、床が重々しくガッチリとした感じがします。

鏡・ガラスの効果について

ちょっとした事ですが、鏡を一面に張り込む事によって、背景の森が逆転して前面に広がっている様に見えます。空間に奥行きと広がりを生み出す事ができます。また、ガラスによる鏡の効果は、ガラスを境に内外の光の強弱によって出現するので、皆さんも心当りがあると思います。この効果は、夕方に始まり夜なか楽しむ事ができます。どの様に光景を重ねて見せるかが演出のポイントで、外灯で照らし出される背景の森が神秘的に見えてくるのが不思議です。

風・通気について

台風・嵐が来ても、4間ある木製建具がガタガタ音をたてる事がありません。南側に山があり、屋根はその形に合った様に形づくられている為です。北風は屋根の上を通り過ぎていき、一方、南風は山の森林で力が弱められている為でしょうか?なぜか木製建具独特なガタガタと不安をそそる音がしないのです。
通気は暖められた空気が1階から階段ホールに集められ、2階へと上昇しトップライトから放出できる様にしています。雨の日は暖炉を開放すると暖まった空気が上昇していきます。面格子付窓(留守時に開放しておける)、ガラリ、無双はその為の仕掛けです。2階の屋根裏は瓦葺きである為、断熱性はあるものの蓄熱性があるので、夏の時期は東西切妻面に小型換気扇を設け、日中~深夜にかけて、強制排気しています。これも正解でした。ただし、床暖する場合は、冬の時期に床下換気口を閉じられる様にすれば良かったと思っています。

子供部屋について

子供部屋は細長くし、仕切って使うようにしました。仕切りはシステム収納家具を使い成長に合わせて、対応出来るようにしてあります。寝室は屋根裏側に設け、寝ながらにして夜空が見えるように天窓を設けました。果たしてその思いが伝わったかは、定かではありません。

脱衣室について

どうしても脱衣室は湿気が出ますし、寒く感じる時が多いいです。その為に、まずは風通しを良くする事が先決です。さらに、オイルヒーターを使うと部屋が暖まり、乾燥を早める事が出来るので快適になります。オイルヒーターの上にタオルバーを設けると、温度調節しだいでタオルだけを乾燥させる事もできます。暖かくカラッとしたタオルは気持ち良いですね。床は麻のマットを敷いています。
それから、脱衣と更衣を同時にする所ですので、スマートに。脱いだものは直接洗濯機に放り込み、下着・普段着の類も直接取り出せるよう、見苦しくなく仕舞い込まれています。旅館の女将、「履物を見たら、その人が分かるんですよ。」と、脱衣室を見たらその家が…?とにかく、生活染みた、ジミジミする所をおしゃれにする事は、品が出る所だと思います。


  
玄関で抑えられた空間は長めの廊下を通ると、階段ホールの天井から差し込む光によって高められ、奥ゆかしさを演出する下役をかっています。このトップライトは光と風だけでなく、蛍光灯が内蔵されていて、夜間でもその空間の質を維持できるのです。また、階段ホールは1,2階をつなげる結節点としてのホール機能を持たせています。この空間がある事で、食堂からドア1つで家中に話しが通じる様になっています。廊下・階段の幅は有効1.2Mと広めにし、段勾配は最も楽と言われる快適勾配(178/240)にしています。

トップライト・階段ホールについて

暖炉について

居間と食堂を隔てる壁として暖炉を設けてありますが、その位置は2階へのオンドル効果としても有効です。暖炉といっても、ビルトインタイプの鋳鉄製ストーブで、コンクリートと仕上げのレンガで覆われています。視覚的には暖炉そのものです。本当の暖炉は暖まった空気をドンドン吸い出してしまい、熱効率が悪いのです。しかも、就寝時の火の管理・始末が厄介な難点があります。我家のスグレ物はドイツ製で炉の断面に経験の基づく工夫がなされていて、簡単には外に排出されない様に造られています。耐熱ガラスの観音扉を閉めると、延焼のオソレは無くなり、トロトロと燃え尽きる様になっています。このトロ火がオンドルの源となって、2階で寝ている私たちをジンワリ温めてくれるのです。コンクリートとレンガは次の日まで1日中ホンノリと冬の日の大黒柱でいてくれます。

基礎・炭について

1階床高さと地面に差を設けず、庭との一体感を出しています。その為、基礎が少し沈み込んでいます。湿気がこもり易くなるので、床下に炭が敷き詰めてあります。コンクリート基礎はベタ基礎になっているのですが、それでも湿気は床から遣って来ます。飛騨の大工さんから聞いた話ですが、神社・仏閣の多くは束基礎となっていて、その湿気と防虫の為に床下に炭を敷き詰める慣わしだそうです。炭には湿度調整、防虫、消臭効果があるようで、最近は建材として見かける様になりました。少々、値段が高いので、私は炭焼き場で2tトラック一杯分焼いて頂きました。床下の為ですので直接に感じられませんが、その成果は50年後に現れるのでは…?と、おおらかに考えています。まさに縁の下の力持ちですね。

ウォークインクローゼットについて

ここは屋根裏ですが、梯子が無くてもウォークインできます。主寝室の隣で楽チンでしょ。半畳のチョットした前室があり、主寝室を妨げることなく、他で収まりきらない物も収納できます。ベニア仕上げの床に、不用になったカーペットを敷いて見違える様になりました。我家の重要な裏方さんです。

風呂について

  風呂は露天風呂にしたい位でしたので、当初は南の川に面した所に設けようと思っていました。結果はマッタクの反対で、道路に面した玄関の横にする事にしました。コダワリを捨てた事が、全体の構成を組み立て直すきっかけとなり、イッキにパズルが解けた訳です。
 竹塀、生垣に囲まれた坪庭を見ながら風呂に入る。昼間は中を窺い知る事はできませんが、夜間のために庭園灯を視線の手前に置く事で目が眩惑し、プライバシーを守る事に役立っています。勿論、雰囲気はGOODです。露天の雰囲気を楽しむため、ここでも面格子を全開に出来ます。それでもマダ、露天風呂を諦めきれず、川のそばに小さな小屋を設けて置き桶に瞬間湯沸かし器からホースを延ばし、お湯をはってやろうと思っています。

照明について

照明には様々な効果がある事を御存知でしょうか? 明るさのほかに演出・表示・防犯・防虫等の効果があります。光の具合によって、雰囲気がガラリと変わります。照度・位置・色によって大きな工事をしなくても、模様替えする事が出来る方法の一つです。蛍光灯でもありますので、先ずは白熱球色に変えると良いでしょう、。防犯にはセンサー付きスイッチが効果ありますし、防虫には水銀ランプを庭園灯にすると、虫がそちらにひき付けられ、部屋への侵入が防げます。ロウソクやランプ等はゆらぎがあって癒されます。

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